占い師になる

末期ガンの相談者

今から数年以上前の話ですが、
ある時、末期ガンの女性が
私の占い鑑定に訪れました。

「スナックを経営してママになることが
ずっと私の夢だったんですけど
今から始めても大丈夫でしょうか?」

それが彼女の相談内容でした。

彼女の病気のことを知った私は
スナックを経営することよりも
まずは体を大事にするように伝えました。

私の考えが見透かされたのでしょう。
彼女は言いました。

「ちゃんと占いでアドバイスしてください。
私は占ってもらうために来たんです。
同情してもらうために来たわけじゃありません!」

そこで、私は

「今はものすごく運気が悪いので
今は店を開くタイミングではないんです」

と伝えました。

実際のところ、彼女の運気は
決して悪くなかったのですが
私は嘘をついたのです。

ところが、彼女の方も負けてはいません。

「だったら、運気が上がる方法を教えてください!」

と食い下がってきましたが、
それでも私は店を出す許可を出しませんでした。

そこから彼女は何度も何度も
私のところに足を運ぶようになったのですが
私は決して首を縦にはふりませんでした。

そして、遂にある時
彼女はこらえきれなくなったように
涙ながらに私にこう訴えました。

「油井先生が店を出すことに
OKしてくれないんだったら、
私は死んじゃうよ」

正直、私が許可を出そうが出すまいが
そんなに店を出したいなら
出せばいいと思ったのですが
彼女はこう言いました。

「それは違う。
私は先生からOKがもらいたいんです」

彼女のあまりの熱量の凄さに
「じゃあ、やってみたら」と
遂に私は彼女にOKを出しました。

そして、彼女は私のオフィスの近くに
スナックをオープンしたのですが、
当時あまりにも忙し過ぎた私は
なかなか彼女の店に行くことができずにいました。

それでも何とか時間を作って
ようやくお店に行くと
「私の一番好きな人が来てくれた!」と
彼女はすごく喜んでくれて
少しだけ話をして帰りました。

その時の彼女は本当に幸せそうで
それまでとは別人のように
よく話し、よく笑っていました。

そして、それから間もなく
彼女はあの世に旅立っていきました。

今でもそのお店があった場所を通りかかる度に
彼女のことを思い出し、そして心が痛みます。

「もっと少し早く彼女にOKを出していれば
彼女はもっとたくさん笑うことができたんじゃないか」
と、、、

長く占い師をやっていると、
本当にいろんな人に出逢います。

想像を絶するような
辛い境遇にいながら
希望を捨てずに生きている人が
世の中にはたくさんいます。

そんな時に重要なのは
基準を広く持つこと。

自分の狭い基準で物事を判断してしまうと
可哀想だなで終わってしまいます。

それでは、占い師として
良いアドバイスはできません。

私たち占い師の仕事は
相談者の悩みを解決し
幸せな人生に導いてあげることですが、

実際のところ何が幸せかは
本人にしかわかりません。

だからこそ、
相談者の心の声に真摯に耳を傾け
相談者が幸せだと思う方向に
背中を押してあげることが
占い師として大切なのではないかと
私は思います。

きっとあなたもこれから
いろんな相談者に出逢うと思いますが
一人ひとりの相談者の心の声に
どうかしっかり耳を傾けてあげてください。

その経験があなたの占い師としての幅を
より一層広げてくれるはずです。

それでは、また。

油井秀允

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